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中抜きをやめさせよう

榊原烋一 【サカスト】
2009年12月9日(水)寄稿

中抜き私事でこんな公器を汚しては申し訳ないのだが、筆者の長男がかなり重度の心臓病になり今月初め開胸手術実施、幸い執刀医が超一流だったのが幸い最良の結果を得られたために、やっと筆を執る気になった。

そんな間に世の中はどんどん動いて行く。今年の流行語大賞にもなった「政権交代」、民主党に託した国民の熱い改革の想いは、どうも次第に消えて行きそうだ。新政権が作った制度ではないが「裁判員裁判制度」は動き出してから大きな事故も無くおおむね好評だ。これまでお上だけの領域であった量刑の市民化とも言うべきこの制度の成功は、国民主権の姿を具体的に表すものとして歓迎したい。ただ、参加者の時間的、精神的な苦痛を取り除くためには更なる改善が望まれるだろう。

民主党政権になってマスコミを賑わわせた事件の最たるものの一つに「事業仕分け」の実施があった。これまでも小さな地方自治体単位で行われたことはあっても国家事業では初めて。好き嫌いはあっても蓮舫議員が右から左へとズバズバさばいて行くのは、絵として見ているには痛快であった。残念なのは時間的制約のため落着いた賛否の議論ができなかったこと、国家事業のほんの一部しか取り上げ得なかったこと、そしてこれが最大の欠点だが、背後に財務省の陰がちらついていたことである。あえて言うならばこれまで密室で行われていた主計局の担当の仕事を、表舞台に引っ張りだして、国民の審判をあおいだのだから正しいのだ、という役人の正当性を評価してやったみたいなところが見え見え。

この問題で削られた方からの反論も結構話題になった。マスコミが取り上げたのはもっぱら科学、芸術等の分野。スーパーコンピュータが世界一でなくてもいいのか、基礎科学分野の予算を削ることは正しいのか、芸術関係や子ども文化に関する予算をなぜ削るのか、これらは各界の著名人がテレビ等マスコミの表面に立ってその非を訴えたからたしかにマスコミが好んで取り上げたがったのも無理はない。

しかしこの問題ではそんな姿がおもしろおかしく取り上げたけれども、本質的な問題にはあまり触れてなかった。例えばオリンピック派遣のための選手強化費の削減でも、過去のメダリストが登場して、これでは次のオリンピックの成果は期待できない、なんて言われると単純な国民はなぜ大切な予算を切るのだ、と怒るだろう。しかしオリンピックの入場行進の映像を見て、日本の行進にはどうして選手でない人間がこんなに沢山いるのだろう、と思った人はいないのか。そう、スポーツ団体における補助だって、役員が使ってしまう金額の方が多いのかもしれない。

科学関係でも、芸術関係でも、補助金のつく所には多くは誰も知らないような特殊法人が設立されて、そこにはちゃんと天下りが控えている。つまり国民の払った税金のかなりの部分は中間搾取されていることをこの事業仕分けからは読み取らなければならなかったのだ。だから実際に芸術家、科学者、スポーツ選手に補助金の大半が回るような仕組みを作れば削られた予算内でも問題は解決するはず。

しかしこの際だからついでに言っておけば、ある程度の金は必要だろうが、芸術やスポーツが金ばかりかければいいものが出来るという考え方も情けないね。古今を通じて名を残した芸術家が大金儲けした話というのはあまり聞いたことはない、むしろ生前はかなり貧乏暮らしをしていたというのが一般的だ。それと、金がもらえなくなってから騒ぐのでなく、もらった金はどのように使い、どのような成果を上げていたかを常々国民に知らせる努力を怠っている、もらう側にもかなり責任があったとも考えられる。何しろこの世の中、多数に知られていないことは何もしてないと同義に扱われてしまうのだということを、その道にいる者も再考する必要がありそうだ。

最近鳩山さんの指導力にはかなり疑問がもたれてきた。とにかく友愛主義なんて情緒的な言葉は政治の世界では通用しない。親からの隠れ援助も問題化しそうだ。とにかく「政権交代」はある種の革命にも匹敵する大事件なのだから、これまでの態勢の中で落ち着いていられた連中からの反対は多いだろうが、そこを歯を食いしばってでも切り抜けてみせるのが革命の革命たるゆえん。これまで仲良しごっこでやって来た日米関係だってある時期ぎくしゃくしたってかまわない。けれどももう一歩日本をどうするのだという道筋が見えないから世間一般もふぬけ状態になってしまうのだ。

【サカスト】筆者が一番恐れていることは、鳩山さんは育ちが良すぎるから、追いつめられると最後は「一抜けたー」と政権をおっ放り出しやしないかという懸念だ。同じようにお育ちの良い細川さんのように。そしてそうなった後の跡目争いの醜さを想像すると暗澹たる気持ちになってしまう。

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