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榊原烋一 【サカスト】 |
昨日の日経新聞にたばこの値上げに関する世論調査の結果が出ていた。調査対象の母数が全国の喫煙者1,030人という少人数であったから、必ずしもその結果が全国民の意識と一致しているかどうかは疑問だが、いくつかの興味ある傾向が見られた。
ちなみに現行のたばこ税は一般的なたばこ税と特別税とをあわせて一本当たり約4.3円ほどだそうだから、ふつう販売されている20本入りのたばこ1箱当たりの税額は86円くらいになる。
最近与野党の議員の中から喫煙防止、あるいは税収増をねらってたばこ増税論がさかんになってきた。ある人は1箱600円くらいにせよ、またある人は思い切って1,000円に値上げしてしまえという論もある。
こういう新聞報道だけを見ていると、なんだか適当な金額をいい加減に出しているかのような印象もあるが、喫煙の社会的影響とたばこ税の関連を調査した学術論文でも最低で1箱600円、最高では1,400円がふさわしいとの論文もあるそうで(ウイキペディアによる)これは極めて学術的な計算を含んでいると思われるのでここでその詳細に触れることは避けておこう。
大ざっぱに考えても日本のたばこの値段はヨーロッパ諸国に比較すればたしかに安い。イギリスあたりでは1箱1,000円を超すたばこは珍しくない。その影響もあってか、英国の喫煙率が27%であるのに対して、日本のそれは40%弱だというからここにもたばこの価格と喫煙率の関係にはかなり相関性があるのかもしれない。
ということから、たばこ税を引き上げることによって健康増進を図ったりひいては医療費の抑制につなげるために、一方では最近の赤字財政を埋める一助として(どちらかと言えばこの要求が本音のようだ)思い切ってたばこを値上げしては、との意見が出ている。
ところで新聞に掲載されたアンケートによれば、もしたばこ1箱1,000円になったらどうするか、との問いに対しては解答者の4分の3に当たる75%の人が禁煙するかまたは禁煙の努力をする、と答えている。次に多いのが喫煙本数を減らすで15%くらい、同じ量を吸い続けると答えた人は僅かに4%に過ぎない。
ということは、もし1,000円に値上げしても喫煙者数が変わらなければ約8兆円にもなろうという税収増はまったく捕らぬ狸の皮算用で、禁煙者続出によりその額は2兆円ほどに減少してしまうわけだ。純粋に健康の面だけを考えるのならば喫煙者が激減することは当人のためにもなるし、周囲の非喫煙者のためにもなってまことに結構なことで、既にたばこをやめた私などは値上げおおいに結構と賛成したいところだ。
ところが、このような集計結果を見ると、とたんに値上げ論者がおとなしくなってしまうところを見ると、彼等の思惑はやはり税金を補うことが主であったと思わざるを得ない。となれば値上げによってたとえ禁煙者が増えたとしても、多少なりとも税収増につながるなら値上げを断行してしまえ、という意見は依然くすぶっていて、それこそ衆院選が終わればまたぞろ復活するのかもしれない。
しかし、もう一つこのアンケートの結果から読み取らねばならない国民の声がある。質問の中に「たばこ税の引き上げについてどう思うか」というのがあるが、これに対する回答のトップは「たばこ税を上げる理由はまったく理解できない」と「たばこ税を上げる理由は多少は分るが、納得はできない」の双方で70%を占めているのだ。まあ喫煙者対象のアンケートだから、値上げ反対の結果が出るのは当然と言えば当然のことなのだが、値上げの根拠が理解できない、納得出来ないと答えた人に更にその理由を聞いてみるとここに大きな問題が隠れていることが分る。
その第一は「まず税金の無駄遣いをやめるべきだから」が80%強ある。次に「たばこだけを狙い撃ちにするのは不公平だから」が60%弱。こんなところに現在の日本人の潜在意識が見事にあらわれている。つまり【サカスト】がさんざん唱えている税金のつかい道の透明性について、国民はこれをまったく信頼していないこと、そして税金は容易に取れるところから取ってしまえ、というお役所の本質を見ぬいていること、にある。
国民の大部分はおそらくたばこに限らず議員や官僚の税金の使い方には依然無駄が多いと感じているのだ。毎日のニュースの中でもこのたぐいのニュースがない日はないと言ってもいいくらい、どこの役所でも税金の無駄遣いが指摘されている。
最近は官僚側から、こことこことは節約することにしますとのニュースも流れてくるが、そんな場合に公表する節約できる金額の合計は決まって千数百万円くらいだ。つまりわれわれの無駄遣いなんて絞り上げたってこれくらいにしかならないんですよ、という釈明のためのリークとしか思えないような報道のテクニックが見え見えだ。
そしてこのアンケートではもう一つ、これも見逃せない回答が含まれていた。それは「政府がJT株の半分を保有しながら健康のため増税するのは政府のスタンスが統一されていないのでは」という意見が44%もあったことである。現在民営化された日本たばこ産業、通称JT株の半分はいまだに政府が保有している。その時価総額は約1兆2千億と言われている。片方でこれだけの株を持ち続けながら、国民の健康増進のためにたばこ税を引き上げると言うのはたしかに矛盾があるではないか。
ことほどさように、現在の政府、官僚、そして議員に対する国民の目は厳しいということをその位置にあるものは強く自覚すべきであろう。つい最近でも福田総理自らが外国人記者に対しては消費税をすぐにでも引き上げたいような発言をしながら、国内からの批判が出ると即座に、あれは2、3年先のことだとぼかしてしまう。総理発言ですらこれでは国民の合意のもとでの増税などは未来永劫出来っこないと思うべきである。